自動車保険を使って車の修理をして保険金の支払いが完了した時に、保険会社からお客様(契約者)に「保険金支払い明細」などが送られてきますよね。
「今回の事故で保険金をこれだけ支払いました」ってやつです。
ただこの保険金(修理代)の額を見て、何となくこれぐらいかなぁって思っていた修理代と全く違うのにビックリする人って多いと思います。
「こんなに修理代かかったん?保険金やからってボッタクリやなぁ」
って、感じる人も多いんじゃないんでしょうか。
おっさんもお客様に、保険で修理した時の修理代の事をよく聞かれたりしますが
「逆ですよ、保険修理の時が普通の価格で通常(自腹)修理の時は安くしてるんですよ、お得意様価格ですからね」
って説明したりしています(^^;)
でもたしかに、町の車屋や修理屋など(新車ディーラーなどは別)は、同じ損害でも保険修理の時と自腹修理で修理代が大幅に違う事ってあります。
それでは、何故そんなに通常(自腹)の修理代と差が出るのか、保険修理が高くなるのかってところを少し説明していきます。
自分で支払う(自腹)修理と保険修理の違いについてのお話です。
保険修理は「元通りに直す・ちゃんと直す」が原則!
通常(お客様の自腹)の修理の場合は
「車の使用状況」「年式」「走行距離」「車の程度」「お客様の予算」
などを考慮して、お客様と修理内容(修理代)を相談して修理をする事が多いです。
それに、損害の度合いや、それぞれのお客様の車の修理の考え方(予算)も違っていて
- 小さな傷は気にならないので損傷の酷い部分だけ直してほしい
- 見た目だけ直っていればいいいので、とりあえず修理代を安くしてほしい
- 年式が古いので交換部品は中古部品使って安くしたい
などなど、希望される修理方法もいろいろです。
しかし、保険修理の場合は、損害部分を全て直す(元通りにする)のが基本です!
とくに自動車事故で当てられた側(被害者)で相手側に損害請求する場合は、ちゃんと修理しなくてはいけません。
被害者になったお客様で「修理代は相手側の保険会社に請求やけど、簡単に直してくれていいよ」なんて言うお客様は1人もいませんもんね(^^;)
そもそも、保険修理と通常(自腹)修理では、基本的な直し方の考え方自体が違います。
出来上がり(直った状態)は同じような感じに見えても、やっぱり作業内容・時間、交換部品(部品代)などが大きく変わってきます。
なので、車屋(修理屋)側からすれば修理代(総額)が通常の修理よりも高くなるのって当然じゃないの?って考え方ですね。
っていうか、自腹修理であっても、ちゃんと(完璧に)修理するのであれば、本当はこれぐらいの手間や費用はかかってしまうんですけどね。
ちゃんとキレイに直すってどういうこと?
それじゃ、自腹修理で安く直してほしいって依頼したらテキトーな作業で、保険修理はちゃんと丁寧な作業なのかっていうと、そういう意味ではないです(^^;)
当たり前ですが、職人さんの仕事内容や丁寧さなどは、どんな作業でも同じです。違うのは作業内容(項目)や交換部品です。
やっぱり、キレイに修復するためには必要に応じて周辺の部品や付属部品などを細かく取り外してから作業することが基本になります。
例えば、部分塗装をするにしても付属部品などをマスキングするのではなく、取り外したほうが隅々までキレイに塗装出来ます。
でもやっぱり、部品を取り外すせば、その分の作業工賃が発生しますので、その分修理代は高くなっていきます。
それと外から見えない部分(エンジンルームの内側ステーなど)の損傷も修正ではなく、しっかり修理(鈑金)して必要があれば交換もするっていうのが基本中の基本です。
ただ、自腹の修理の場合であれば、隙間から覗かないと見えないような取付けステーだったら修正・調整して交換はしないって事も多いと思います。
もちろん、交換しないと仕上がりに問題がでてくるかもって感じなら、交換って判断になると思いますけど。
正直、見えないような細かいところまで全て部品を交換していくと、どんどん費用がかかってきますもんね。
「ちゃんとキレイに直す」っていうのは、こういう見えない(気にならない)ところまで、きっちり修理するって事です。
保険修理は作業以外の手間と時間がかかる
保険修理の場合は、通常(自腹)の修理と違い、お客様との打ち合わせなどの他に保険会社とのやりとりが必要になります。
- 車の入庫時の連絡や、お客様と保険会社の連絡係など
- アジャスターとの打ち合わせ・相談
- 細かい見積書の作成、修理代の交渉・協定
などなど、保険修理には修理作業のほかに事務的な手間と時間がかかります。
「それだけ?」って思う人もいるかもしれませんが、その間は作業が止まることもあるので意外と面倒くさいんです(^^;)
それに保険会社との話がスムーズに進めば良いですが、事故の内容や修理内容によって保険会社との交渉が長引くことも普通にあったりします。
3~4日で修理が終わるような内容でも何週間もかかってしまうこともあります。
さらに修理代の支払いは、修理代の協定後(遅い場合には、数週間後)になり保険会社(事故の相手側)の段取り(都合)で振り込まれます。
なので、車屋(修理屋)からすれば
直接お客様からの依頼で修理をするよりも手間と時間がかかって支払いも後なのに、わざわざ安くする必要なんてある?
っていう考えが普通(当たり前)になっています。
だからといって、保険会社に高い請求をしているわけでもないですし、もちろん保険会社に高い請求が認められるわけもありません。
普通に認められる実際にかかった修理代(工賃)を請求しているだけです。まぁ、安くはしてないですけど(^^;)
それに保険会社は、お客様でもお得意様でもありませんから。
そもそも損害に対しての保険会社に請求する場合「安く修理する」「値引きをする」といった考え自体がありませんよね
そもそも、工賃設定が違う!
自動車の修理の場合は、個々の修理箇所ごとに作業時間がだいたい決まっていて、これを「指数」といいます。
保険修理の場合は、保険会社も修理屋も同じような修理見積ソフトを使っていて、実際に作業にかかった時間ではなくこの「指数」によって作業時間が決まります。
それと店(地域や店の規模で相場)で決めているレバレート(時間あたりの作業工賃)をかけて工賃が決まります。
レバレートは、その店の考え方や地域の相場によって違っていて町の修理屋であれば、7,000円~10,000円ってぐらいやと思います。
新車ディーラーなどは、9,000~12,000円ってぐらいで、外国車や高級車の専門店あれば、もっともっと高いです。
高級車を扱っている店や設備(店構え)にお金(経費)をかけている店ほど、高いレバレート(工賃設定)でも身と認められるって感じですね。
例えば、フェンダーの軽い凹み修理の場合
保険修理の場合
- 部品脱着 指数0.6(作業時間0.6時間)×レバレート(¥9,000 )= ¥5,400-
- 鈑金修理 指数0.8(作業時間0.8時間)×レバレート(¥9,000 )= ¥7,200-
このような計算方法で各損傷部分ごとに工賃が計算されて、その他に部品代や塗装代・その他費用も含めて合計修理代になります。
なので、修理代の設定方法は、どの車屋(修理屋)でも同じような感じになります。
しかし、事故修理でも通常(自腹)修理の場合は、この計算方法だとお客様にとって非常に高くなったりする場合があります。
町の車屋(修理屋)などは、商売という考え方もあってお客様に納得してもらえるように(自社で修理してもらえるように)独自の計算方法で安く見積りを出しています。
まぁ、よくあるのが
「これぐらいの凹みだったら、鈑金塗装して全部込みで○○万円ですね」
っていう風に、簡単に分かりやすく“1枚(1か所)修理して○○円”って感じです。
こうのような工賃の設定方法の違いが修理代が大きく変わる理由の1つです。
まとめ
上記の理由1つ1つから、保険修理は高くなる?って感じやと思います。
車屋(修理屋)からすれば、保険修理の修理代が本来の普通の修理代で、通常(自腹)の修理代を安くしているという考えが正しいと思います。
でもやっぱり、お客様からすれば「そんなん言うても実際、保険修理は儲かるんやろ」ってなるんでしょうね。
正直言うと、保険修理は安くしないでいいという意味で儲かります(^^;)
ただ、町の車屋は保険修理ばっかりあるわけではないので
「日ごろ安く鈑金修理を請けているので、たまにある保険修理ぐらいは定価計算で請求してもいいんじゃないの」
っていう気持ちがやっぱりあります。
っていうか、そうじゃないと商売としてやっていけないってところもあります。
おっさんからすれば、保険修理も通常の修理もほぼ同じ内容で見積り計算をする新車ディーラーなどは修理代がほとんど変わらないことが多いので羨ましいです。
ただ、それは新車ディーラーのブランド力と顧客の多さ・価格(修理代)の信用性があって出来ることなので、比べてたらダメですけど(^^;)
まぁ、おっさんみたいな町の小さな車屋は「安く」「うまく」「丁寧に」を心掛けないとお客様は来てくれませんね。